5月の中旬に、横浜の本牧にある三渓園(さんけいえん)でスケッチしてきました。
三渓園は、明治から大正にかけて製糸・生糸貿易で財をなした、原富太郎(号・三渓)が作った日本庭園です。
庭園の広さは175000平方メートルと非常に大きく、京都や鎌倉などから17棟の歴史的な建造物が移築されています。
(というか、そんなものを持ってきていいのかな…)
また、四季折々の花や植物も見どころです。
2007年には国の名勝に指定され、庭園全域も文化財として登録されています。
この庭園で写真を撮る人や、スケッチする人も多いのだとか。
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さて、当日は根岸駅で電車を降り、バスで本牧へ向かいます。
最寄りのバス停から10分ほど歩くと、三渓園に到着しました。
さっそく入園料(500円)を払って庭園に入り、絵を描くのに良さそうな場所を探します。
正門を入ると、まず大池が目に飛び込んできました。
そこには誰も乗る人がいない、一艘の木の舟が浮かんでいました。
大池と蓮池・睡蓮池に挟まれた道を歩くと、山渓記念館に到着しました。
建物の中では、山渓による書や絵画の掛け軸が展示されていました。
絵は上手!という訳ではありませんでしたが、その中のカモメの絵は味があって面白かったです。
その隣には、下村観山(wikipedia)の日本画が展示されていました。
僕は、特にその中の一点の絵に引きつけられました。
一面の新緑の木々の中、ところどころに山桜が描かれていて、緑とピンクのコントラストが映えています。
おごがましいかもしれませんが、僕の絵のタッチに少し似ているようで、なんだか嬉しくなりました。
別室には、投句箱に寄せられた俳句の中で特に優秀だったものが展示され、一つ一つにの色紙に句の内容に沿った絵が添えられていました。
挿絵は日本画家の池田美弥子さんという方が描かれたそうです。
これだけの量の絵を一人で描くのは、手間が掛かっただろうなぁ…と思いました。
また、記念館の出口付近には茶席がありました。
そこでは和服を着た若い女性が、訪れた人たちにお茶を振る舞っています。
女性は正座をして背筋を伸ばし、とても良い姿勢を保っていました。
(僕は飲みませんでしたが…)
記念館を出て、大池の周りを反時計回りにぐるっと回ってみます。
途中には茶色の野良猫がいました。
しばらく歩いていると、スケッチに良さそうな場所を二ヶ所見つけました。
一つは、木の橋の向こうに山と三重塔が見える場所。
もう一つは、池に架かる木の橋が見える場所です。
僕はどちらにしようか迷いましたが、池の水面を描きたくなったので、後者の方を選びました。
ちょうど木陰になっている場所に腰を下ろし、スケッチ用具を広げて、午前11時前から描き始めました。
今日は良く晴れていて、木々の新緑がきらきらと輝いています。
しかし、池は昨日降った雨のせいで茶色く濁っていました。
ときどき、橋の上を観光客が通っているのが見えました。
おじさんが池の鯉に餌をやっていたので、その場面も描き加えました。
最近は、できるだけ風景画にも人物を入れるようにしているのです。
池の柵の手前には、黄色のアヤメの花や、白いウツギ(ウノハナ)の花が咲いていました。
僕はウツギの白い色を表現したくて、マスキングインクというものを使ってみました。
これは乾くと固まる特殊なインクで、絵の具を塗った後ではがすとそこだけ白く抜けたようになります。
ただ、このインクを使ったのは初めてだったため、まだ使い勝手がよくわからなくて、いまいち狙った効果は出せませんでした。
しばらくすると、僕の近くにカメラマンが現れ、橋の上で礼装を着た新郎新婦の写真を撮っていました。
これは結婚式の前に撮る「前撮り」というそうです。
数人のカメラマンが入れ替わり立ち替わりで、新郎新婦に細かく指示を出し、何十枚も撮っていました。
そんな光景を見ながら、僕は描き続けました。
できるだけ木々や水面を細かく描きたかったのですが、あっという間に時間が経って、少し焦ってしまいました。
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それでも、午後4時半頃になんとか絵は完成しました。
まだ白い部分が多いのが少し気になりますが、とりあえずこれで良しとします。
閉園の音楽が流れる中、急いで絵の写真を撮ります。
スケッチ用具を片付けて、午後5時の閉園の2分前に庭園を出ました。
ぎりぎり間に合ってよかったです。
帰りはまたバスに乗って、根岸駅へと戻りました。
Keisuke