人物水彩であれこれ思うこと

先日、セツで人物水彩の授業がありました。

人物水彩は、これが四回目です。

前回(三回目)のときには、絵の背景を先に塗って上から人物を描いたところ、色が濁ってひどい出来になったので、そのままお蔵入りになってしまいました。

アクリル絵の具のような不透明な絵の具だったら、この描き方でも上手くいったかもしれませんが、水彩絵の具を使って描くのは難しいようです。

そこで、今回は色が濁らないようにするため、ある程度計画性を持って、大まかに人物の輪郭線を描いてから色を塗っていくという手法をとりました。

これだと色と色同士があまり重ならないので、色が濁らずに済みます。

今回は、ベッドに横たわる男性のモデルさんを描いてみました。

このポーズは一見するとリラックスして見えますが、実際には結構首が辛かったようです。

今回描いた人物水彩の絵
今回描いた人物水彩の絵

三時間ほどして完成した絵は、今までの人物水彩の中では最も気に入った出来になりました。

少し頭が大きいかもしれませんが、デッサンはそれほど崩れていないし、背景もある程度は描きこんでいます。

また、色も濁っていないし、なおかつ強い色も乗せることができました。

手ごたえを感じたため、今回は少し自信を持って講評会に望みました。
今回、講評するのは女性職員のMさんです。

「うーん、まだ絵が固いですね。
 見た通りに描くのではなく、もっと崩して描いてもいいですよ」

とのこと。

あぁ…今回は少し自信があったのになぁ…。
僕は残念に感じました。

そして、以前に風景を描いたときにも、同じようなことを言われたのを思い出しました。

結局、ずっと同じ描きかたをしていれば、セツではずっと同じことしか言われないのかもしれません。

それでは、同じところをグルグルと回るだけで、出口は見つからないでしょう。
まるで、迷路に迷い込んでしまった飼育用のねずみのように。

しかし、崩せと言われても、どこをどう崩していいのか見当がつきませんでした。

…どうして見たままを描くのではなく、崩して描く必要があるのだろう?

僕は帰りの電車の中で、夕焼け空を眺めながらぼんやりと考えていました。
(うまくまとまらなかったので、その後もしばらくはこのことが頭から離れませんでした)

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その中で、「そもそも絵を描くとはどういうことだろう?」という原点に立ち返ってみました。

例えば、写真と絵の違いというのは、どこにあるのでしょうか?

写真の場合、何を撮るかは人それぞれですが、同じ構図で撮った写真は全て同じ仕上がりになります。

(もちろんこれは極端な話で、ピントやシャッタースピード・絞りなどの、写真を撮る上での技術を全く無視した場合です)

ですが、絵では同じ構図で描いたとしても、絶対に他人と同じ絵になることはありません。

それは、その人が持っている「フィルタ」を通して世界を見ており、その上で絵を表現しているからです。

写真と絵の違い
写真と絵の違い

例えば、梅雨の天気の場合、「ああ、じめじめして嫌だなぁ…」と考える人もいれば、「綺麗なアジサイが見られてラッキー!」と考える人もいるでしょう。

同じものを見ていても、人によって全く別の見え方や感じ方をすることは多々あります。

それがフィルタと呼ばれているもので(僕が勝手に呼んでいるのですが)、個人個人が生まれながらにしてあらかじめ持っているものです。

そのフィルタがどういう形や色をしているかで、自然と「絵の個性」が出てくるのではないかと考えています。

そして、各々の生徒が持っている独自のフィルタを、セツでは特に大事にするのではないでしょうか。

だから、「もっと崩してもいいよ」という言葉は、言い換えると「もっと自分のフィルタを掛けていいよ」ということだと思います。

僕はまだ、そのフィルタの掛けかたが弱いのかもしれません。

では、もっと強く自分のフィルタを掛けるとしたら、何をアレンジすればよいのでしょうか。

それは大まかに分けて「」と「」とがあると思います。

ただ、僕はあまり「」をいじりたくないのです。

なぜなら、普段の授業で人物デッサンを繰り返し、せっかく上手くなってきたのに、わざわざそれをデフォルメして手放してしまうのが非常に惜しいのですよね…。

また、わざと形を崩して描くと「下手だと言われてしまうかもしれない」という不安感もあります。

講評で言われたことは理解できますし、理屈ではわかっているのですが、なかなかその一歩を踏み出すことはできません。

また、僕はジグソーパズルのように、図形的にきっちりと辻褄が合っているものを「何て美しいのだろう!」と感じて、とても惹きつけられてしまいます。
(とはいえ、僕は文系人間で数学は苦手だったのですが)

ただ、「」に関しては、もう少し自分のフィルタを掛けてもいいのかもしれないと思いました。

確かに僕が昔に描いた作品を見返してみると、結構冒険している感じが伺えますが、最近は少し大人しくなってしまっているのかもしれません。

まだ、あれこれ試行錯誤している段階ですね。
でも、描き続けていれば必ず前には進めると思います。

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う~ん、これで言いたいことがうまく伝わっているでしょうか。

今回は文章を書きながら考えをまとめているので、まだもやもやとした部分が残っていますね。

Keisuke

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