安野光雅さんの展覧会に行ってきました

先日、安野光雅さんの展覧会に行ってきました。

安野さんは日本を代表する絵本作家で、数多くの絵本を出版されています。

特に「旅の絵本」シリーズが代表作で、読んでいると自分も旅をしている気分になります。

また、安野さんは何度もヨーロッパを旅行して、大量のスケッチを残しています。

今回はそのスケッチと、「旅の絵本」シリーズで使われた原画が中心に展示されていました。

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僕が安野さんの絵に初めて触れたのは、「はじめてであう すうがくの絵本」シリーズでした。

これは、子供に数学の楽しさをわかりやすく伝えることを目的にしたシリーズの絵本で、今までに3冊出版されています。

家にあったのはどれだろう?と思って調べてみると、どうやら三冊目が家にあったようです。

下記のサイトで少しだけ試し読みが出来ます。

絵本ナビ「はじめてであう すうがくの絵本3」

いびつな形に引き伸ばされたウサギを見て、「そうそう、こんなのだった!」と、数十年ぶりの記憶がよみがえってきました。

というわけで安野さんの絵といえば、僕はとんがり帽子をかぶった小人が思い浮かびます。

「旅の絵本」シリーズも家にあったそうですが、こちらはあまり印象に残っていません。

文章がなく画集のような内容だったので、子供の頃の僕にとってはあまり面白くなかったのでしょうか…。

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さて、当日行った美術館はこちらです。

東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館

二人分の招待券が新聞の応募で当選したので、母親と一緒に行きました。
新宿にある損保ジャパンのビルに向かいます。

損保ジャパンのビル
損保ジャパンのビル
展示会の看板
展示会の看板
入り口
ビルの入り口

エレベーターで42階に上がると、そこからは東京の町並みが一望できました。
テレビで安野さんの足跡をたどる映像を見てから、展示場へ向かいます。

入り口を入ると、そこには安野さんが描いたヨーロッパのスケッチが並べられていました。

これらは透明水彩で描かれたもので、その場の空気感が伝わってくるようです。

その中でも、特に雪景色のスケッチが印象に残りました。
非常に細かい木の枝の一本一本に、雪が積もっている様子が描かれています。
これはどうやって描かれたのだろう、と思いました。

また、僕が訪れたスペインのサンティアゴ・デ・コンポステーラのスケッチもありました。
でも、こんな場所があったかどうかは思い出せませんでした。

次のフロアには、「旅の絵本」シリーズで使われた原画が展示されていました。

僕はそこで、一枚一枚の絵に見入ってしまいました。
なぜなら、絵が非常に細かく描かれていたからです。

例えば屋根瓦はペンで一枚ずつ輪郭線が描かれており、さらにその中は別々の色で塗られていました。
僕もペンで緻密に描くことはありますが、ここまではさすがに真似できません。

これを描くのには、どれだけの根気と時間が必要なのでしょうか。

僕は一枚一枚顔を近づけて見たため、思ったよりも時間がかかってしまいました。

次のフロアには、テレビ番組の企画で描いたスケッチが展示されていました。
そこで、僕は安野さんの語ったある言葉に目を留めました。

「単に見えるものを描くのではなく、自分自身の感覚で自由に風景画を創造すること」

という言葉です(うろ覚えですが…)。

風景で気に入らない箇所があれば、自分でアレンジしてしまっても構わないのだとか。

事実、幾つかの絵では建物の配置をを入れ替えたり、場所を移動しながらスケッチしたものもあるそうです。

僕はこの言葉を見て、セツの授業でも同じことを言われたことを思い出しました。

これは偶然ですが、全く別々の場所でこの内容を聞いたり目にするということは、僕にとって絵を描く上で大きなヒントがあるのかもしれません。

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最後のフロアには、安野さんの絵ではなく、この美術館が所蔵している絵が飾られていました。

特に、美術館の名前にもなっている東郷青児さんの絵がたくさんありました。

彼の絵は油彩が使われていますが、筆致を残さずに綺麗なグラデーションで描かれています。

なんだかCG(コンピューターで描いた絵)を印刷したみたいだなぁ…。
僕はそう思ってしまいました。

また、海外の画家の作品も幾つか展示されていました。

その中でも特にこの美術館の目玉になっているのが、ゴッホの「ひまわり」です。
これはバブルの頃に購入されたもので、その額に注目が集まったとか。

実際に見てみると、思ったよりも大きな絵で驚きました。

その隣には、ゴーギャンとセザンヌの絵が飾られていましたが、なんだか色調が少し沈んでいるような気がします。

それに比べると、「ひまわり」はとても色調が鮮やかで人目を惹きます。
僕はゴッホの絵はあまり好きではありませんでしたが、この絵はいいなと思いました。

最後にお土産に「旅の絵本」のスペイン版を買いました。

僕がスペインの巡礼で行ったところもちょこちょこ載っていたので、少し嬉しくなってしまったり。

スペイン版の旅の絵本
スペイン版の旅の絵本

それから、お昼にスパゲッティを食べて帰りました。

レストラン
レストラン
パスタ
パスタ

Keisuke

森本美由紀さんの展覧会に行ってきました

先日、森本美由紀さんの展覧会に行ってきました。

森本さんは、僕が通っているセツ・モードセミナーの卒業生で、ファッション・イラストレーターとして、長らく第一線で活躍された人です。

主に女性誌の表紙やカットイラスト、児童小説の挿絵、俗に「渋谷系」と呼ばれるピチカート・ファイブのCDジャケットのイラストなど、幅広い仕事を手掛けています。

残念ながら、彼女は既に2013年に54歳の若さで亡くなっていますが、今回は足跡を振り返るということで、企画展が開催されました。

セツでも告知が行われ、無料の招待券が生徒に対して一人一枚ずつ配られたので、せっかくだからと足を運んでみることにしました。

とは言っても、実のところ僕はセツに入るまで彼女の名前を知りませんでした。
絵も「そういえば見たことあるかな?」という程度です。

なぜなら、僕はあまりファッションに興味は無く、女性誌に目を通す機会があまりなかったからです。

また、例え見ていたとしても、ちゃんと目を留めることなく、素通りしてしまっていたのかもしれません。

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さて、僕は当日に上野駅で電車を降り、企画展が開催されている弥生美術館に向かいました。

建物は駅から二十分ほど歩いたところにあります。
お昼を回って、外は炎天下です。

そんな中をしばらく歩いていると、上野の名所である不忍池(しのばずのいけ)が見えてきました。

池は水面が見えなくなるほどのハスの葉で覆われていました。
この暑さなのに、植物はとても元気です。

不忍池
不忍池
ハスの花
ハスの花

また、その向かい側には野外のコンサートホールがあり、アイドルグループたちの歌声が聞こえてきました。(誰が歌っていたのでしょうか?)

細い通りに入ってそのまま道なりに進むと、弥生美術館に到着しました。

建物は思ったよりも小ぢんまりとしており、隠れ家的な美術館です。
隣には喫茶店も併設されていましたが、僕は利用しませんでした。

弥生美術館の入り口
弥生美術館の入り口

うだるような暑さだったので、到着したときはほっとしました。
館内は冷房が効いていたので涼しかったです。

入り口で一息ついてから、中に入りました。

この建物は、三階までが展示室になっており、そのうちの一階と二階が森本さんの作品の展示会場になっています。

まず、僕は一階から回ることにしました。

一階は、雑誌などで使われたファッション画が展示されていました。

まず、見て思ったことは…「う、上手い!」という感想でした。

彼女は墨と筆を使って、一気に人物の輪郭線を仕上げています。
その線には迷いが無く、非常に描きなれている印象を受けます。

また、省略も上手だと感じました。
例えば顔の輪郭は全てを描くわけではなく、必要に応じて省略しています。

それでもうっすらと想像で輪郭線が補えるのは、目鼻立ちがくっきりと描かれているせいでしょうか。

う~ん、こんな人を今まで気にも留めずにいたのか…。
そう思って、僕は少し恥ずかしくなってしまいました。

とは言っても、ところどころホワイトで修正している絵も見かけました。
やっぱり森本さんでも失敗することがあるのだな、と少し安心しました。

作品のパネル
作品のパネル

二階には森本さんが描いた漫画が展示されていました。

作画はアメコミ風で、一階のファッション画とはまた少し違った印象を受けます。

彼女は仲の良かったモデルさんを主人公にして、漫画を描いたそうです。
内容は、金星に住んでいた王女が地球を訪れるというものでした。

また、展示場にはイラストと併せてパネルがあちこちに貼られており、彼女が書いた文章や語った言葉が紹介されていました。

その中で、あるパネルに貼られていた、特に印象に残った言葉があります。

それは、「感動なしでは絵は産まれない」ということです。
(ちゃんとメモを取っていなかったので、内容はうろ覚えなのですが…)

彼女は一時期、写真を見ながら想像で描いていたことがありましたが、10年続けていると自分が空っぽになってしまう感覚になったそうです。

そのため、それからは仲の良い女性のモデルさん(先ほどの漫画の主人公)にお願いし、実際にポーズをとってもらって作品作りに役立てたそうです。

森本さんは、特にモデルさんの膝の裏が気に入っていて、そこが「感動する部分」だったとか。

そして、絵を描く上では「どんな小さなことでもいいから、自分が感動した部分を入れなさい」とのことでした。

順に見ていくと、展示の最後のほうには、ある百貨店で行われたキャンペーンで使われたイラストが展示されていました。

そのキャンペーンは非常に大規模なものだったそうです。
彼女のイラストが巨大なタペストリーになって、百貨店のビルの吹き抜けを覆っている写真がありました。

僕もこんなことが出来たら、さぞかしすごいことだろうと思いますが、今は全く想像できません。

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それから森本さんの展示会場を後にして、三階のフロアに向かいました。

三階は、高畠華宵(たかばたけかしょう)という画家の作品が展示されていました。

彼は大正から昭和にかけて活躍した人で、特に美人画を得意としたそうです。
とても柔らかいタッチで、当時人気が出たのだろうなーと思いました。

次に竹久夢二(たけひさゆめじ)美術館にも足を運びました。
この二つの美術館は中でつながっており、両方が共通の券になっています。

竹久夢二とは、明治末期から昭和初期にかけて数多くの美人画を書いた画家です。

また、彼は絵を描くだけではなく、本の装丁や広告を手がけるような、今で言うデザイナーの仕事もこなしていたそうです。

こちらの美術館では、竹下夢二の美人画が数多く展示されていました。

美人画に関しては、それほど感激をしなかったのですが、包装紙やレコードのジャケットに関しては、「おっ!」と思わせるようなものがありました。

美人画は古さを感じますが、特に包装紙のデザインに関しては目新しさがあり、今でも十分に通用するように感じたのです。

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美術館を出てから、帰り道の途中で「旧岩崎邸」に立ち寄りました。

もともとここに立ち寄る予定はなかったのですが、まだ午後5時の閉館までに時間があったためです。

と言っても、この館がどんな建物なのか、全く事前に調べていませんでした。

旧岩崎邸の入り口
旧岩崎邸の入り口

入場料(400円)を払って中に入ってみると、ものすごく大きな洋館が待ち構えていました。

洋館の正面玄関
洋館の正面玄関

玄関で靴を脱いで館内に入ると、内部の装飾も豪華絢爛です。
よっぽど建築にお金がかかったに違いありません。

館内は撮影禁止だったため、写真を残すことができなかったのが残念でした。

一室ではビデオが上映されており、この館のあらましが解説されていました。

それによると、この館は岩崎弥太郎の長男である、岩崎久弥という人が建築の依頼を出したそうです。

岩崎弥太郎の名前は、聞いたことがあるかもしれません。

実際に何をした人なのかは見当が付かなかったのですが、ビデオの案内を聞くと、明治時代に三菱財閥を興した人でした。

そして、岩崎久弥は三菱財閥総帥の三代目に当たる人物です。

これだけのお金を掛けられる人って、一体何者なのだろう?
僕はそう思っていましたが、説明を聞いて納得がいきました。

確かに、これだけの邸宅を造れるのは、並大抵のお金持ちではありません。
横浜の山手にも洋館はありますが、それよりもはるかに規模が違います。

ですが、洋館の内部はあまり落ち着ける場所ではありませんでした。
装飾にお金や手間がかかっているのがわかるため、なんだかそわそわしてしまいます。

さっと見るだけ見て、隣の和館のほうに移動しました。

洋館と和館は廊下でつながっていたため、外に出ずにお互いを行き来することができます。

洋館を使うのは主に来客用で、普段の生活をするときには主に和館のほうを使っていたそうです。

和館に入ってみると畳敷きの日本建築で、とても落ち着く雰囲気を受けました。
やっぱり日本人なら、洋館よりも和館のほうが肌になじむのかもしれません。

建物にはところどころに、家紋である「重ね三階菱」をあしらったデザインが施されていました。

これは、現在でも使われている三菱グループのシンボルの原型になったものです。

和館の大きさは洋館に比べると狭いのですが、これは戦後に建物の大部分が取り壊されてしまったからです。

建築当初には、和館は洋館よりも大きな面積を占めていたのだとか。

ああ、もったいない。

和館を一通り見たあと、建物の外に出て広大な庭を散策しました。

ここでは写真撮影が可能なので、建物の写真を撮りました。
また、ここならスケッチしても構わないそうですが、日陰がないので今の時期は少し厳しそうです。

和館の縁側
和館の縁側
庭園越しに
庭園越しに
庭から洋館を眺める
庭から洋館を眺める
撞球場(ビリヤード場)
撞球場(ビリヤード場)

それから、上野駅まで歩いて帰りました。

いろいろなものを見ることができたので、なかなか楽しかったです。

Keisuke