前回の記事の続きです。
三日目は鹿島神宮に行ってきました。
この神宮は全国にある鹿島神社の総本山で、非常に古い歴史があります。
古事記や日本書紀に登場する、軍神と崇められたタケミカヅチが祭られています。
実は、この神社にも何度か訪れたことがあり、スケッチをしたことがあります。
神社の近くまでは父親の車で送ってもらいました。
車を降りて門前町の道を抜けると、杉でできた大きな鳥居が出迎えてくれました。
僕が写真を撮っていると、そこで案内をしていたガイドの人が話しかけてきました。
「この鳥居は、以前は石で作られていたんですが、東日本大震災の時に倒れてしまったんですよ」
「へえ~、そうだったんですか」
「それから長い間、鳥居がなかったんですが、去年、神社に生えていた杉を切って新しく造りました。樹齢500年から600年ほどの大きな杉の木を三本使ったんです。神社の出口近くには、その時に使われた杉の切り株がありますよ」
「それじゃ、後で行ってみることにします」
それから僕は参道を通って奥に進みました。
楼門を抜けると、そこは開けたスペースになっており、本殿や授与所(お守りなどを売っているところ)、宝物館などがあります。
宝物館には国宝の刀が展示されているとの事ですが、拝観料がかかるので、まだ中に入って実物を見たことはありません。
僕は拝殿にお参りをして「いい絵がかけますように!」と願いをかけてきました。
(本殿はその奥にありますが、ここからはちょっとしか見えません)
それからおみくじを引くと、「吉」という結果が出ました。
書かれていることは、悪くないけれど飛びぬけて良くもありませんでした。
ここから参道は神社の奥に向かって真っ直ぐに続いていますが、僕は脇道にそれて「祖霊社」というところに行きました。
ここはかつて神職に携わった人たちの祖先を祭る場所ですが、特に見るべきものがあるわけでもなく、また知名度があるわけでもないため、観光客が訪れる場所ではありません。
(ガイドの人も、「ここは別に見なくてもいいですよ」と言っていました)
僕もあまり期待せずに、「ちょっとだけ見てみるか」という気持ちだったのですが、実際に足を運んでみると、思ったよりも良い場所でした。
入り口の鳥居をくぐると、その近くには赤い手水舎(ちょうずや・手を洗うところ)と呼ばれる建物があります。
正面には祭殿があり、木でできた横に長い建物になっていました。
地面は一面が苔むしていましたが、触ってみると天然の絨毯のようにふわふわしていて、じめじめとした不快感は全くありませんでした。
まさに「モスグリーン」の色です。
この場所は木立の中にあるので、周囲では蝉がうるさく鳴いていましたが、あまり人が訪れることのないため、とても落ち着ける場所でした。
さらに、ここは日陰になっており、それほど暑く感じません。
僕はこの場所が気に入って、ここでスケッチするのもいいなと思いました。
すぐに始めてもよかったのですが、せっかくなのでその前に神社の中を一通り回ることにしました。
杉並木の参道に戻ってそのまま奥に進むと、左手に鹿が飼われている広場が見えてきました。
この神社では鹿は神の使いとされているため、大切に飼育されています。
一説によると、奈良公園で飼われている鹿はこれらの子孫だそうです。
しかし、暑さのせいもあってか、どの鹿もあまり動き回らずに日陰でじっとしていました。
そのまま参道を進むと、奥宮が見えてきます。
そこを右に曲がってしばらく歩くと、要石(かなめいし)と呼ばれる石がありました。
この石は、外から見ると頭の部分だけが少し見えているだけです。
しかし、江戸時代に水戸光圀が家来に掘らせてみたところ、七日七晩掘ってもその石の全貌が見えなかったそうです。
そのため、これは地震を起こす大鯰の頭を押さえている石だと言われています。
ただ、東日本大震災では、この神社も大きな被害を受けてしまいましたが…。
参道に戻ってさらに奥に進むと、御手洗池(みたらしのいけ)という場所に到着します。
ここは古くからの禊(みそぎ)の場になっており、一日に400リットル以上の水が湧くそうです。
池の上には古い木が横になっており、倒れないように木のつっかえ棒で支えていました。
その近くには売店や休憩所がありましたが、まだ時間が早かったため、周囲にはほとんど観光客の姿は見られませんでした。
ガイドの人が言っていたように、池の近くにはまだ新しい大きな切り株がありました。
この切り株の杉の木が、正門の大鳥居の一部に使われたようです。
(残りの二本の切り株の場所は、結局よくわかりませんでした)
この池の付近も好きな場所の一つなのですが、以前にここでスケッチしたことがあるため、今回はやっぱり先ほど見つけた祖霊社で描くことにしました。
来た参道を戻り、途中の売店でお茶を買い足してから、祖霊社で用具一式を広げ、スケッチを開始しました。
時刻は午前10時半頃です。
スケッチの中心に描いたのは、鳥居の近くの手水舎です。
建物の赤色と、背景の木々や地面の苔の緑色とが補色の関係になっており、お互いに引き立てあうのではないか、と考えたからです。
ですが、実際に描き始めると形を取るのに非常に苦労しました。
なぜなら、建物の屋根が微妙なカーブを描いており、それをちゃんと描こうと思うと、どうしても辻褄が合わなくなってしまうからです。
下描きをしないことは決めていたため、最初に薄いピンクを使って塗り、徐々に濃い赤色を乗せていく作戦を取りました。
しかし、三回くらい描き直しても、どうしても形が決まりませんでした。
最終的には「うーん、これでいいかな」と妥協して描き続けていましたが、どうしても屋根の中心と、建物の中心がずれているように感じます。
なんだかここの部分がどうしても気になるなぁ。
そう思いながら描いていました。
ここには観光客がほとんど訪れることがなかったので、一人で静かに描いていました。
アリなどの虫は多かったですが、蚊はそれほど寄って来なかったのが幸いです。
また、一日中日陰だったため、昨日に比べれば非常に快適でした。
途中で休憩を挟みながら、午後3時半頃まで描いていました。
いつの間にか日が傾き、ヒグラシの鳴き声が聞こえてきます。
完成したスケッチは、色は気に入っているものの、やっぱり建物の形がおかしな気がします。
ただ、セツでは形が狂っていても、それほどうるさく言われないので、これでいいかと思ってスケッチを終了させました。
立ち去る前に、祖霊社の祭殿に「今日はありがとうございました」と挨拶をして、元の参道を戻りました。
最後にまた拝殿にお参りをしました。
朝に来たときには気付かなかったのですが、その近くには鹿島アントラーズに所属する選手たちの寄せ書きがありました。
柴崎選手はとても達筆でした(笑)
帰り道の途中には、鹿島出身の塚原卜伝(つかはらぼくでん)の銅像がありました。
彼の名前は有名ですが、宮本武蔵に比べるとエピソードが地味のような気がします。
それから鹿島神宮駅まで歩き、鹿島臨海鉄道で帰りました。
四日目に続く!
Keisuke