今日は支笏湖(しこつこ)に行くことに決めました。
湖行きのバスは一日5便で、最も早いのが9時2分発。
まだ出発までに時間があります。
すると、おばちゃんが声をかけてくれました。
「あなた、絵を描いているんだって?私もねぶたの絵を描いているの。良かったら見る?」
彼女は庭に僕を案内し、ビニールシートをはがして見せてくれました。
僕の身長ほどある大きさの紙に、色鮮やかな絵の具で二体の人物が描かれています。
(どういう物語に登場する人物なのかは、忘れてしまいました)
いやぁ、良いものを見ることができました。
それから僕は停留所に向かい、バスに乗りました。
バスは原生林の中を突っ切っていきます。
終点の停留所を降りると、そこは観光地になっていました。
お土産屋(アイヌの楽器であるムックリや、木彫りの彫刻など)や、飲食店が軒を連ねています。
ゲストハウスの前には、潜水服に着替えている人たちもいました。
今日は天気が良く、日差しも強いです。
遊歩道を歩いていると、支笏湖の湖畔に到着しました。
そこには、貸し出し用のスワンボートが並べられていました。
湖畔からは、樽前山(たるまえさん)や恵庭岳(えにわだけ)が一望できます。
樽前山は、1909年の噴火によって頂上付近に火山ドームが形成されました。
まるでプリンやババロアを逆さにしたような形をしています。
ちょうど子供の砂場遊びのように、型抜きをして作られたようです。
ただ、湖畔の景色は確かに良いですが、絵を描くにしては少しありきたりです。
とりあえず、候補地の一つとして覚えておくことにします。
他に良い場所はないかと、いろいろな場所を探してみました。
この湖からは、唯一川が流れ出している箇所があります。
その川が以前に描いた千歳川で、ここから千歳市街へと繋がっているようです。
流出場所には赤い鉄橋が架かっています。
過去に軽便鉄道として使われた鉄橋を、そのまま持ってきたそうです。
この橋の上からは、川と湖の両方を眺めることができます。
多くの観光客が足を止めていたので、僕もそこから眺めてみました。
水は透明度が高く、見事なグリーン色!
中で泳いでいる魚や、底の石までくっきりと見ることができます。
僕はその鮮やかさに感動してしまいました。
この湖は、環境省の水質調査で何度も日本一に認定されているのだとか。
僕は、この近くで描く場所はないかと探しました。
すると、ちょうど木陰になっていて、橋と川が両方眺められる場所を見つけました。
木の柵の向こう側なので、少し危ないかもしれません。
でも、十分なスペースは確保されているので、注意していれば川に落ちることはないでしょう。
地面は柔らかい芝生になっています。
僕はここに場所を決め、イーゼルを立てて10時半頃から描き始めました。
まずは広い面積から…ということで、空と川から手を付けます。
空気が乾燥しているのか、空は本州よりも明らかに色が鮮やかです。
鉄橋の構造は複雑だったため、描くのが難しかったです。
橋の上にいる大勢の観光客たちも描いたので、手間がかかってしまいました。
川の浅いところでは、水遊びをしている子供たちがいます。
親子連れの姿をよく見かけるのは、お盆の週に入っているからでしょうか。
また、川にはカヌーを漕いでいる人や、潜水服を着て水面の下に潜っている人がいました。
僕はその様子を絵に描き加えました。
観光客の会話は、こちらまで届いてきます。
「絵を描いている人がいるねぇ」と、ときどき僕のことが噂されていました。
柵の向こう側で描いているため、わざわざ絵を見に来る人は少なかったのですが。
その中でも、子供が反応を示してくれるのは嬉しいです。
「あの人、めっちゃ絵が上手い!」 と言って、親の元に駆け寄って報告していました。
それを聞くと、僕は思わずニヤリとしてしまいます。
昼食用のおにぎりを食べ、芝生に寝転んで一眠りしてから、また続きを描きました。
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午後5時前に作品は完成しました。
絵の写真を撮って、後片付けをします。
帰りの最終バスの発車時刻は午後5時45分です。
乗り遅れたらアウトなので、僕は急いでバス停へと戻りました。
宿に戻り、銭湯に行ってから夕食をとります。
最後なので、ちょっと贅沢にとんかつを食べました。
この日はライダーたちが多く、宿も一杯になっていました。
また、インドから来ているお客さんも泊まっていました。
今日描いた絵を見せると、とても喜んでくれました。