今日は、それほど早く起きなくても良い日でした。
食堂で朝食をとり、出発の準備をします。
部屋を移ってくれと言われていたので、荷物をまとめました。
同じ部屋に泊まっている人によると、台風が近づいているとのこと。
もしかしたら、10日に乗る帰りのフェリーに直撃するかも知れません。
うーん、どうしようかなぁ。
とりあえず、今日は釧路埼灯台に足を運ぶことにしました。
一昨日描いた厳島神社の近くです。
実は、一昨日「描かせてください」と書き置きをした家の人から連絡があり、許可を頂いていたのです。
返事が頂けるとは思ってもいなかったので、とてもありがたく思いました。
幣舞橋を渡り、現場に向かいます。
今日もお祭りの期間中で、釧路川ではボートレースが行われていました。
10時半頃に、釧路埼灯台近くの現場に到着しました。
家の呼び鈴をさっそく押すと、40歳くらいの男性が出迎えてくれました。
頭は坊主で、あご髭を生やしています。
「こんにちは。一昨日、庭で描かせて頂きたいと連絡をした木庭と言います」
「あ、よろしく。場所はどの辺り?」
「その崖の近くです」
「わかった。じゃあ、描いていいよ」
「ありがとうございます!」
僕は庭に荷物を広げると、さっそく描き始めました。
今日は雲一つない快晴で、日陰もないためかなり暑いです。
遠くには、キラキラと光る海が見えます。
眼下には、海沿いに高架橋の線路が見えました。
これは「臨港線」と呼ばれ、釧路で唯一の石炭を運ぶ路線です。
ときどき、高架橋の上にディーゼル車に引かれた貨物列車がやってきます。
荷台の底が開くと、細かい石炭が橋の下に落ちていきます。
遠隔操作のボタンを押すと、荷台の底が開く仕組みなのでしょうか。
橋の下には石炭の山ができていました。
ここにはトイレが近くにないので、米町公園まで行く必要がありました。
ついでに公園の東屋でお昼を食べ、一眠りします。
少し休んでから、また戻って描き進めました。
しばらくすると、家主さんが現れました。
「これから家族で出かけてしまうから、終わったら片付けて帰っていいよ」
「わかりました。ありがとうございます!」
彼らが出発する前に僕は名刺を差し出すと、彼も名刺を渡してくれました。
彼は釧路市内でレストランを経営しているのだとか。
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絵は午後4時半頃に完成しました。
荷物を片付けて、現場をあとにします。
僕は早めに宿に戻ろうと思っていました。
しかし、お祭りの様子を眺めたり、画材屋で物色しているうちに時間が経ってしまいました。
僕は初日に食べた駅前の食堂に入り、チキンカツ定食を食べました。
午後8時過ぎに、ようやく宿に戻りました。
「すみません。遅くなりました」
「今日はお客さんが多いから、昨日とは別の部屋を使って。荷物はもう移しておいたわよ」
「ありがとうございます」
今日は祭りの屋台を出している人も泊まっているので、その分混雑しているようです。
お風呂に入ってから食堂に行くと、そこには若い女性と男性が話をしていました。
僕もそこに腰掛けて、話をすることにしました。
女性は自転車で日本中を旅しているそうです。
「もう出発してから200日以上経つのかな。もちろん、途中で休んだり働いたりしていますけどね」
「そんなに長く旅をしているなんて凄いですね!」と、僕。
「みんなそう言うんですけど、私はそう思っていないんですよ。ひたすら目的地を目指して漕ぐだけでいいんですから」
「いやいや、それでも凄いですよ」
彼女はとても腕の太い人で、腕相撲をしたら負けそうでした。