6月13日(金) マドリッド~シェレメチボ(ロシア)(飛行機移動)

 朝6:00前に起床。部屋で朝食をとる。それからロビーに降りて行き、他の宿泊客と一緒に7:00頃シャトルバスに乗り込み、マドリッドのバラハス空港へ向かう。
 全員が乗り込むと、運転手は「で、空港のどのターミナルに行くんだ?」と聞いてきたので、僕の隣にいたアジア系の女性が「ターミナル4」と答えていた。僕はターミナル1に向かう予定だったが、昨日フロントの人に伝えたことだし、ボーっとしていたのでそこで答えなかった。ターミナル4に着いた後、僕が「ターミナル1に行きたい」と言ったら、運転手に「確認したじゃないか」と怒られてしまった。ごめんなさい。
 その後ターミナル1まで運転してもらった。到着したのはまだ7:30を少し過ぎた頃だ。行きに利用したアエロフロート航空を帰りでも利用することにしていた。しかし航空会社のチェックインカウンターにはまだ誰もいなかった。
 そのことをインフォメーションセンターに聞くと、「まだ時間が早いので誰もいないんじゃないか」とのことだった。12:00発の飛行機に乗る予定だったので、確かにまだ時間が早すぎたのかもしれない。あと一時間ほどオスタルの出発を遅くしてもよかったかも。仕方ないのでカウンターの前のベンチに座り、バックからスペイン語の会話集の本を取り出して読んだ。今更覚えても仕方ないかもしれないけれど、日本に帰ったら少しスペイン語を勉強してみるのもありかもしれない。
 一時間ほど読んでいるとだんだん飽きてしまったので、それから人間観察をすることにした。僕の隣には「セーフティバッグ」と称して、搭乗客の荷物を緑のビニールテープでぐるぐる巻きにするサービスが行われていた。係員は非常に手際よく専用の機械でパッケージをし、最後に足のキャスター部分だけカッターで穴を開けて、客が引っ張って持ち運べるようにしていた。これは盗難防止などに有効だと書かれていたけれど、わざわざお金を払ってそこまでする必要ってあるのかなぁ、と思う。客の一人に陽気な黒人がおり、鼻歌を口ずさみながら荷物をパッケージしてもらっていたが、彼の荷物は柔らかいバッグだったので係員はパッケージするのが大変そうだった。パッケージが終わると、彼はまた鼻歌を歌いながらどこかに歩いていった。
 そこで2時間以上時間をつぶし、10:00前にようやく航空会社のカウンターに人が現れたのでチェックインをする。荷物を預け、チケットを受け取り、搭乗ロビーに向かう。
 まだ搭乗開始には時間があるので、搭乗ロビーの近くの本屋さんに立ち寄って、何か読めそうな本がないか探してみた。しかし当然ながらそのほとんどがスペイン語の本だったので読めなかった。店の前には新聞が置かれていて、どの一面にもブラジルがクロアチアに3-1で勝ったと報じていた。やっぱりワールドカップはすでに始まっていたみたいだ。また、新聞の記事には「ハポネス」と「ニシムラ」という文字があったので、日本の西村さんがその試合の審判を行ったようだった。また、店内の一角にはサッカー関連の書籍が置かれたコーナーがあり、「僕はネイマール」というタイトルの彼の自伝的小説などがあった。
 雑誌コーナーにも立ち寄ってみると、ミリタリー系の雑誌で日本の「神風特攻隊」が特集されていた。当然文章は読めなかったのでぱらぱらと写真だけでも眺めていたが、遠く離れたスペインの地で日本の古い写真を見るのはなんだかとても不思議な気分になった。
 それからペーパーバックのコーナーにも立ち寄ってみた。その中の一冊に日本人作家の名前が書かれてあったが、僕はその作家さんの名前を知らなかった。僕はそのタイトルを確認してみると、「『セントロ』が中心で、『アモール』が愛だから・・・わかった、『世界の中心で愛を叫ぶ』か!」ということがわかって少し嬉しくなった。そうすると「ムンド」が世界になるから、先ほどの新聞紙の「エル・ムンド」という名前は「世界」という意味になるようだ。芋蔓式にスペイン語が少しずつわかってくるとちょっと楽しい。
 一週間前から左下の歯が痛く、ここのところ特に痛くなったようで特に何もしなくてもずきずきと痛む。放置していた虫歯がここに来て悪化しだしたのかもしれない。僕は親にもうすぐ飛行機に乗ることと、歯が痛いことをメールした。
 しばらくすると搭乗時間になったけれど、なかなか搭乗開始にならない。結局飛行機は一時間遅れで出発。モスクワのシェレメチボ空港の乗り継ぎの時間が1時間10分しかないので大丈夫かな。
 大丈夫じゃなかった!
 シェレメチボ空港に着いたときはもうすでに次の便が行ってしまった時間だった。カウンターでそのことを話すと、係員に一枚の紙切れを渡されて、「ソウルのインチョン空港に行く便があるから、それに乗れ」とのこと。そこから成田に行くアシアナ航空の便があるらしい。
 僕がいきなりのことで戸惑っていると、二人の男性の日本人が話しかけてくれた。彼らも同じ便で日本に帰る予定だったが、乗り継ぎの飛行機に乗れなかったとのこと。僕も含めて3人で一緒に行動しようということになった。
 中年の男性は航空会社の特別な会員のようで、乗り継ぎの列に並ばずさっさと専用のゲートのほうに行ってしまった。もう一人の男性も行ってしまったので、僕もあわてて彼らの後を追うことにした。
 それから搭乗ゲートの近くの喫茶店で時間をつぶす。彼らはコーラを飲んでいたが、僕は歯が痛いので何も頼まなかった。お互い「大変なことに巻き込まれたね」と話した。テレビでは昨日行われたワールドカップの再放送をやっていた。
それから彼らは自己紹介をしてくれた。一人はTさんという中年の男性だ。彼は僕に名刺を渡してくれた。それによると埼玉でスペイン料理を経営しているようだ。今回はスペインでブドウの畑をチェックし、荷物を仕入れたその帰りらしい。彼は「若い人たちを見ると応援したくなるんだ」と言っていた。
 もう一人は24歳のSさんという男性だ。スペインの音楽の大学に9ヶ月留学して、その帰りのようだ。彼は楽器を手に持っていた。クラリネットだろうか。話していると、彼の地元が非常に近いということがわかってびっくりした。
窓からの眺め
窓からの眺め
 Tさんは「航空会社の対応が悪いんだよ、普通だったらお詫びの品くらい渡されるじゃん。それが紙切れだけ渡されても戸惑うだけだろ。こうなったらソウルで焼肉食べに行こうぜ」と憤っていた。彼は帰った後すぐに仕事をする予定だったが、それが大幅に狂ってしまったらしい。やっぱり利用したのが格安の航空会社なので、こういうところのサービスは行き届いていないのかもしれない。
 それからTさんにスペインに来た理由を聞かれたので、一ヵ月半ほどカミーノを歩いていた、と言われたら驚いていた。僕が仕事をやめてきた、と言ったら、「人生一度きりだから好きなことをやったほうがいいよ」と言ってくれた。
 インチョン空港行きの飛行機の搭乗時間になったので乗り込む。僕たち三人の席はみんなばらばらだった。周りを見渡しても、ほとんどが韓国人だ。今度は定刻通りに出発。

窓からの眺め
窓からの眺め

←前の日(サンティアゴ・デ・コンポステーラ~マドリッド)
→次の日(ロシア・シェレメチボ~成田)