5月17日(土) モラティノス~カルサディージャ・デ・ロス・エルマニージョス(23.7km)

モラティノス~カルサディージャ・デ・ロス・エルマニージョス
モラティノス~カルサディージャ・デ・ロス・エルマニージョス

 6:00起床。アルベルゲで出された朝食(3ユーロ)はトースト2枚とカフェ・コン・レチェだけだった。これだけでは物足りなかったので、またどこかで食べないと。
 アルベルゲを出発したら満月が沈むところで、とても大きく綺麗に見えていた。今日も雲ひとつない晴天で、今は寒いけれど、午後から暑くなりそうだ。いつものように麦畑の中の田舎道を歩く。途中靴が高い電線に引っかかっていたけれど、どうやって引っ掛けたのだろう。

出発前のアルベルゲ
出発前のアルベルゲ
朝食はこれだけ…
朝食はこれだけ…
巡礼路と満月
巡礼路と満月
電線に引っかかっていた靴
電線に引っかかっていた靴

 歩いているときにこんなことを考えた。僕は会社にいたときに思わしい結果を残せなかったけれど、それでもいい上司にめぐり合えたじゃないか。その人に対して僕は貰ってばかりで何も返せていなかった。在籍していた頃は気付かなかったけれど、実は僕は恵まれていたのではないだろうか。会社を辞めてしまった今からでも、何か少しずつお返しするようなことはできないだろうか。でも具体的にはどうしたらいいんだろう。
 そんなことを考えながら歩いていると、いつの間にかサアグーンという町が近づいてきた。国道を横切り、橋を渡って町の中に入る。町の入り口には門があり、そこには両側に二人の男性の彫刻がある。その足元には「カミーノ・デ・サンティアゴ」と文字が彫られていた。もうすでにお腹が空いていたので、9:10頃にバルに入って二度目の朝食。カフェ・コン・レチェとチョコレート入りの菓子パンを頼む。

町の入り口の門
町の入り口の門
足元には「カミーノ・デ・サンティアゴ」
足元には「カミーノ・デ・サンティアゴ」
レンフェの駅舎
レンフェの駅舎
二度目の朝食
二度目の朝食

 そこにイタダキマスのおばちゃんがいたので、僕たちはお互い「いただきます!」と挨拶をした。それから彼女は真剣な表情になって、「貴重品の入ったバッグをモラティノスの宿に忘れた」と話してくれた。どうやらこのバルに入って、会計をしようとしたときに忘れたことに気づいたらしい。そのため今はお金を持っていないようだ。バルの店員さんに頼んで、アルベルゲの電話番号を調べてもらい、どうにかして連絡をつけたいようだった。僕は「何とか見つかるといいけど」と伝えたけれど、自分に出来ることはないので、冷たいようだけど先へ進むことにする。
 サアグーンは人口2800人ほどの町で、サン・ジャン・ピエ・ド・ポーをスタートした場合の「フランス人の道」のほぼ中間地点に位置している。町の中にはいくつかの教会や門などの史跡が点在しており、石切り場が近くになかったため、泥で作ったレンガを積み上げて作られたものも多い。その一つに崩れかけた教会があり、その崩れ方が好きだったので写真を撮る。時間があればじっくり見たりスケッチしたいところだったけど、時間が無いので写真だけたくさん撮った。そんなことをしている間に他の巡礼者がどんどん抜いていったので少し焦る。なぜなら今日宿泊する予定のアルベルゲは少人数しか泊まれないからだ。

サン・ベニート門
サン・ベニート門
崩れた教会の門
崩れた教会の門
ベンチの足にも一工夫
ベンチの足にも一工夫
「サアグーン・カミーノの中心」
「サアグーン・カミーノの中心」

 サアグーンの町を出てから4kmほど進むと、巡礼路が二つに分岐するポイントに出た。アスファルトの道路に書かれたカミーノの目印になる黄色い矢印も二方向に別れている。
 左に行くとエル・ブルゴ・ラネロという町を経由する道、右に行くとカルサディージャ・デ・ロス・エルマニージョスという町を経由する道だ。前者は「レアル・カミーノ・フランセスの道」と呼ばれ、後者は「トラナハの道」と呼ばれている。前者は車道に沿って舗装されている道だが、後者は舗装されていない田舎道だ。また後者のほうが若干距離は長い。どちらの道を通っても30kmほど先のマンシージャ・デ・ラス・ムラスという町で合流するが、今日の宿泊場所が異なる。
 僕は右側の後者の道を選んだ。こちらのほうがもともとの巡礼路であり、また車の通りがなく静かでカミーノらしい道だということを知っていたからだ。分岐点で地図を取り出して確認していると、通りかかった巡礼者のおばちゃんが「右は遠回りになるから左の道を行け」と言ってくれた。でも僕はもう進む道を決めていたので、右側の道を進む。

分岐点に立つ看板
分岐点に立つ看板
矢印も二手に分かれている
矢印も二手に分かれている

 そこから500mほど歩いたカルサーダ・デ・コトという町のバルで休憩。店内には他の巡礼者の姿は見当たらなかった。さっき食べたばかりなのに、またお腹が空いてきたので、いつもの「ボカディージョ・トルティージャ・パタタ」を頼む。最近は昼食にはこれを食べてばかりだ。ボカディージョの中でも安い部類に入り、なおかつボリュームがあるからだ。また同じメニューでもバルによってそれぞれ少しずつ味が違うのも面白かった。
 食事を終え支払いをすると、バルのおばちゃんに「この先どっちへ行くの?」と聞かれたので、僕はリュックから地図を取り出して説明した。すると彼女は「それならこっちの道だわ」と店を出て道を指差してくれた。ありがとう。

軒下の巣
軒下の巣
いつものボカディージョの昼食
いつものボカディージョの昼食

 その後はひたすら乾燥した赤土の道を進む。雲ひとつない青空が広がり、日差しが強く、非常に暑くなってきた。町を出てから歩いている人を見かけなかったので、道が正しいのか不安になる。もしかしたら巡礼者はもう一方の道を歩くことが多いのかもしれない。

この道を行けというわけですね
この道を行けというわけですね
あの…誰もいないんですが…
あの…誰もいないんですが…

 しばらく歩くと線路があり、それを高架橋で越える。その先には池があり、オレンジの大地と青い池とのコントラストが目立った。そこで写真を撮っていたら、後続の人が来たので少し安心した。大地は乾燥しているが、道の脇には草木が生え、花も咲いていた。紫の花はラベンダーかな。

高架橋の上から
高架橋の上から
砂漠のオアシス
砂漠のオアシス
バラの花…かな?
バラの花…かな?
ラベンダーの花
ラベンダーの花
日差し強っ!
日差し強っ!
誰かの靴が置かれていた
誰かの靴が置かれていた

 途中道の脇にある「フエンテ・デル・ペレグリーノ(巡礼者の泉)」で休憩。ここの泉には水が湧いていたので、その水で顔を洗う。水はひんやりとしていた。泉は林の中にあり、木漏れ日と時折吹き付ける風が、ほてった顔に心地良かった。泉の向こう側には草に埋もれた誰も使いそうもない滑り台やブランコなどの遊具が置いてあった。しばらくそこのベンチに腰掛けてぼーっとしてしまった。

巡礼者の泉
巡礼者の泉
使われなくなった遊具
使われなくなった遊具

 そこから少し歩くと、赤茶けた道の向こうにカルサディージャ・デ・ロス・エルマニージョスの町が見えてきた。13:30頃に町に到着。ここは小さな町で、公営と私営のアルベルゲが一軒ずつある。僕は公営のアルベルゲに泊まることにした。昨日電話したところとは別のアルベルゲだ(ごめんなさい!)。

町の入り口
町の入り口
町の地図
町の地図

 チェックインのときに、近くにいた女性の巡礼者に「今日は一杯よ!」と言われて頭が真っ白になった。僕は一瞬「またかよ!」と思ったけれど、すぐにそれが冗談だとわかってほっとした。本当に洒落にならないので、嘘だか本当だかわからない冗談はやめてくれ・・・。でも実際には定員が22人のところ18番目だったので結構危なかったようだ。
 それからシャワーを浴び、洗濯をし、一眠りする。その後町の中を散歩すると、町の外れに小さな教会を発見した。教会は閉まっていたので中に入れなかったが、その近くには広場があり、中央には噴水があった。その広場のベンチに腰掛け、久しぶりにスケッチをする。なかなか良い出来になったけど、2時間かけても線画しか終わらなかった。以前よりも細かく描きたくなってきたため、一枚を仕上げるのにますます時間がかかってしまう。

町の一角にあった水道
町の一角にあった水道
教会の扉に描かれていた絵
教会の扉に描かれていた絵
広場
広場
広場のスケッチ(後日加筆あり)
広場のスケッチ(後日加筆あり)

 その後オスピタレロに教えてもらった小さな商店に立ち寄り、今日の夕食と明日の朝食の分の食材を購入。それからアルベルゲに戻り、キッチンで夕食を作ることにした。今日は「トルティージャなら簡単に作れるんじゃないか」と思って、レシピも知らないのに自己流で作ってみた。しかし結論から言うと、見事に失敗してしまった。
 以前ブルゴスの手前の町でツナ入りのトルティージャを食べたことを思い出して、パックの袋に入って売られていた煮込まれたニシンをほぐして一匹丸々トルティージャの中に入れてみたが、それが間違いだった。完成したものはトルティージャとは程遠いもので、ところどころ焦げてしまったスクランブルドエッグのようになってしまった。その割にはニシンにちゃんと火が通っていなかったようで、妙に生臭かった。
 しかし残すのももったいないので何とか完食。やはり行き当たりばったりで作るのはダメなようだ。もうしばらくはトルティージャを作らないことにしよう。
 夕食の席でアントニオさんという人と話をする。以前トサントスのアルベルゲで会っていたようだが、僕はすっかり忘れてしまっていた。彼は僕がほとんど一人で皿洗いをしていたのが印象に残っていたらしい。彼も友人と一緒に夕食を作っていたが、スパゲティにトマトソースをかけただけだったので、僕の料理と同じく、あまりおいしそうには見えなかった。
 その後ポニョの替え歌を巡礼者用のノートに書く。教会で21:00からミサがあると聞いていたが、その時間に教会に行っても閉まっていた。残念。
 22:00頃就寝。

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