4月23日(水) 出発日前日

 今日が出発の前日だ。事前にリストアップしていた持っていく物を準備し、40リットルの大型の赤いリュックに詰め込む。リュックは二週間ほど前にモンベルで購入していたゼロポイントというものだ。それには空港で荷物を受け取るときの目印として、水色のバンダナをくくりつけてある。雨が降ったときに備えてリュックカバーもついでに購入しておいた。
 ガイドブックは「日本カミーノ・デ・サンティアゴ友の会」が出版している日本語の本と、巡礼路の地図が書かれた英語の本の二種類を持っていくことにした。日本語のガイドブックは歴史などの記述は非常に丁寧だが、巡礼路上の宿の場所や町の地図については若干記述が不足しているように感じた。そのため地図が載っている英語の本もサブとして持っていくことに決めた。
 着ていく服は基本的に上下黒のジャージ。ものすごくダサいというデメリットを除けば、この服装が一番動きやすいからであり、またこの格好でそのまま眠れるからだ。また、ハーフパンツも二着用意した。ちなみにジーパンは汗を吸って重くなることを知っていたので持っていかないことにした。
 また、寒くなったときに備えてユニクロのフリースも一枚用意していた。表は白で裏は茶色のリバーシブルのもので、片側が多少汚れても裏返せばまだ着用することができる。でもスペインの気候が暑いのか寒いのかは、実際に行ってみないとよくわからなかった。
 しかし、準備を進めようと思っても、なかなか身が入らなかった。これは僕の頭の中に、「900kmも本当に歩けるのだろうか?言葉が通じない海外で、やっていけるのだろうか?そもそもまずスタート地点のサン・ジャン・ピエ・ド・ポーまで無事にたどりつけるのだろうか?」などと不安が駆け巡っていたためだ。
 また、自分の語学力にも不安があった。英語は高校を卒業してからほとんど使っていないし、ましてスペイン語は全く喋れないに等しかった。時間があればスペイン語は勉強するつもりだったけれど、結局簡単な挨拶くらいしか覚えていないまま前日を迎えてしまった。
 そんなことを考えていると、不安で3日前くらいからものすごく憂鬱になってしまっていた。なぜ行くって決めたときはあんなに気持ちが高ぶっていたのに、直前になるとこんなに憂鬱なのだろう。結局準備は夜中の1時くらいまで掛かってしまって、それからも全然眠ることができなかった。

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