今日は釧路に向かう日です。
他の男性客を起こさないようにしながら、荷物をまとめてライダーハウスを後にしました。
美瑛駅まで40分かけて歩きます。
駅に到着し、8時21分発の電車に乗りました。
電車は30分ほどで富良野駅に着きました。
ここで少し待つ必要がありますが、直通運転で帯広まで行けます。
僕は発車まで車内で待機しました。
すると、駅員さんに「この車両は切り離すので、前に移ってください」と言われました。
ここから先は二両から一両編成に変更になります。
それでも、車内は一杯になることはなく、まだ席に余裕がありました。
JR北海道の経営は厳しいと聞いています。
やはり、今後はますますローカル線は廃止になったり、本数が大幅に減らされてしまうのでしょうか。
電車は9時23分に富良野駅を出発しました。
今日は天気が良く、北海道らしい雄大な景色が車窓を流れていきます。
この電車で特に目立ったのが、以前に旭川に向かう車内でも遭遇した、「乗り鉄」「撮り鉄」と呼ばれる電車オタクの人たちでした。
JR北海道の起死回生を狙えるのは、もしかしたら彼らなのかもしれません。
「山部駅」というところで電車は一旦停止したので、僕は外に出て写真を撮りました。
電車は徐々に高度を上げていき、まるで空の上を飛んでいるかのようです。
長いトンネルを抜けると空気が一変し、窓ガラスが急に曇りました。
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11時34分に帯広駅に到着しました。
次の電車は約一時間待ちです。
僕は改札を出て、休憩所でコンビニで買ったパンを食べました。
根室本線の釧路行き電車も、一両編成のワンマン車両でした。
ここからは3時間半、ずっと同じ電車に乗りっぱなしです。
車内にはクーラーがなく、頭上でやる気のない扇風機が回っているだけです。
あまりの暑さにくらくらしてしまいましたが、電車が走り出すと窓から涼しい風が吹き込んできました。
帯広から数駅離れると、車内は急にがらがらになりました。
僕は四人用のボックス席に一人で腰掛け、外の景色を眺めました。
僕と同じく、周囲にはマイペースな旅を楽しんでいる人が多いようです。
通路を挟んで僕の隣に座っているおじさんは、完全にリラックスムード。
彼は靴を脱ぎ、向かい合わせの座席に足を伸ばして乗せ、ビールを開けておつまみを食べています。
僕も真似して靴を脱ぎ、座席に足を乗せました。
足の匂いはかがないでね…。
この辺りは、いわば「秘境駅」と呼ばれる、誰も乗り降りしない小さな駅が続いています。
途中で「上厚内(かみあつない)」という駅に着きました。
ここでは7分間停車したので、僕は列車から降りました。
ここは古い木造の駅舎で、引き戸を開けると待合室になっています。
鉄道ファンの人も多く訪れているようで、カウンターの上にはノートが置かれています。
そこにファンからのメッセージが残されていました。
僕もノートに「横浜から来ました」と書きました。
多分、もうここに訪れることはないと思いますが…。
(乗降者数の減少により、2017年にこの駅は廃止になったそうです)
そのうち、電車は太平洋に面した海沿いに出ました。
左は崖、右は海がどこまでも続いています。
チョコレート色の海は波が高く、荒涼とした景色が広がっています。
まさに地の果てを走っている感じですね。
僕は電車の左側に座っていましたが、ときどき右側に移動して海の写真を撮りました。
この非日常的な風景は好きです。
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午後4時10分に、電車は釧路駅に到着しました。
地下道を通って外に出ます。
釧路は思ったよりも大きな街で、少し驚きです。
まず、僕は駅構内の観光案内所に立ち寄りました。
「明日、釧路湿原に行きたいんですが…」と、僕は相談しました。
「それなら、網走(あばしり)方面行きの電車で行く必要があります。観光列車のノロッコ号がお勧めです。展望台に行って、戻る時間は十分にありますよ」
「こっちのほうは?」と、僕は指差しました。
「塘路湖(とうろこ)に行くなら、このサルボ展望台までは行けますよ。かなり歩きますけどね。
その先のサルルン展望台までは行けません」
案内所の人は、僕に釧路発・網走行きの列車の時刻表を渡してくれました。
最も早いのが6時2分発で、その次が9時3分発。
ノロッコ号が出るのはお昼近くになってからです。
さすがに6時2分発は早すぎると思ったのですが、なるべく朝早くから描きたいとも思っていました。
うーん、どうしようかなぁ。
とりあえずもう少し考えることにして、今日泊まる予定の「民宿 銀鱗荘(ぎんりんそう)」に向かいました。
ここはライダーハウスも兼ねており、一泊1100円で泊まることができます。
地図上ではさほど距離を感じませんでしたが、歩くと遠く感じました。
30分ほどで宿に到着しました。
外から見ると、かなり年季の入った建物です。
玄関を入ると、おばちゃんが出迎えてくれました。
彼女はとても世話焼きな人です。
宿泊の手続きをし、宿の説明を受けてから二階へと上がります。
三人ほどが泊まれる広さの畳の部屋に案内されました。
外観からは想像もつかないほど、中は綺麗に片付いています。
一休みしてから、また駅前へと向かいます。
「きた乃家」でサンマ定食を食べました。
店を出て銀鱗荘に戻る前に、釧路川の河口付近(釧路港)をぶらぶらしました。
ここには「フィッシャーマンズワーフMOO」と呼ばれる施設があります。
「MOO」という商業施設と「EGG」という植物園とに分かれています。
この日は炉端焼きの屋台が出ていました。
おいしそうだなぁ…と思ったのですが、すでにお腹は一杯。残念!
釧路川に架かる幣舞橋(ぬさまいばし)には、四季をテーマにした四体の女性のブロンズ像が置かれています。
特にここから見る夕日は美しく、「世界三大夕日」の一つに数えられているのだとか。
(あとの二つはどこだろう、とも思いますが…)
宿に戻ると、ご主人が食堂で宿泊客と一緒に食事をとったり、お酒を飲んだりしていました。
ここでは食事も提供してくれるそうですが、最終日でいいかな、と思いました。
やっぱり、明日は6時2分発の電車に乗ろう。
僕はそう決めると、早く寝ることにしました。