あとがき 巡礼を終えて

 本当にたくさんの人に支えられて歩き通すことができたと思う。こんなにトラブルが起きるとは思わなくて、お金を盗まれた辺りでは途中で投げ出そうと思った時があった。けれど最後まで歩き通せてよかったし、自信にもつながったと思う。
 僕は文章の中で「心も体も強くなったと感じる」と書いていた。しかしその後はあまり積極的に体を動かすことはなかったので、いつの間にか元に戻ってしまったようだ。メンタル面でも強くなれたかどうか…はっきりと「イエス」と答えられるような自信はない。
 それにカミーノを歩いているうちに自分の進む道は見つかったのだろうか。なんとなくという方向性は掴めてきた感じはするけれど、まだ具体的にこうだとはっきり書けないのが現状だ。非常にあいまいな表現でごめんなさい。
 それでは元の木阿弥なのか?と言われたら、それは違うと思う。多分カミーノを歩いたことで、僕の見えない奥のところで何かが少し変わったのではないだろうか。しかしそれが具体的に何か、と言われると困ってしまうけれど。
 ところで僕はサンティアゴの巡礼事務所で証明書を受け取るときに「ペインター」だと言ってしまったけれど、果たして本当にそうなのだろうか。カミーノを歩いているときの僕自身に恥ずかしい思いをしないように、日頃から絵を描かないといけないとは思っているけれど、実際には最近は文章を書くほうが面白く感じてしまって、絵を描くことはかなりサボってしまっている。これは何とかしないと・・・。
 そうそう、カミーノを歩いた理由について。これは結局のところ最後までちゃんと答えることができなかったけれど、今思うと多分会社にいたときに無意識に「ここではないどこか」を求めていたのだと思う。僕のいる狭い世界から脱出したかったのかもしれない。おそらく精神的な自由を求めていたのではないだろうか。
 そして僕は心が傷ついていたので、カミーノで癒しを求めていたのかもしれない。ひたすら目的地に向けて歩くという行為で、ぐちゃぐちゃになった自分自身の気持ちを整理したかったのだと思う。そしてカミーノを歩く中で、少しは整理された…かな?
 なんだか取り留めのない文章になってしまったけれど、とりあえず行って良かったと思っている。最後に旅行中に僕を支えてくれた人たちにもう一度感謝を。ブエン・カミーノ!

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