外を見ると、どんよりと空は曇っていました。
天気予報では、午後から雨が降り出すとのことです。
今日から三日間、ずっと雨の予報です。
北海道に動きの遅い前線が停滞し、局所的には大雨になるといいます。
僕は困ってしまいました。
雨が降ると、外で描くことはできません。
とりあえず、今は雨が降っていないので出かけることにしました。
目指すは町営のラベンダー園です。
こちらもファーム富田に負けない大規模な農園です。
麓にはマリーゴールドなどの花が植えられており、斜面に沿って山の上までラベンダー畑が広がっています。
花で「なかふらの」という文字が大きく書かれ、それがこの畑の目印になっています。
リフトで上まで登ることができ、冬場はスキー場になるそうです。
ところが、僕が行った時間には、まだリフトが動いていませんでした。
仕方なく、歩いて頂上に向かいます。
頂上には展望台がありました。
晴れていてば十勝連峰を一望できるはずなのですが、今日は雲に隠れてほとんど見えません。
展望台からは、奥の北星山の森林公園に行くことができます。
今日はこの公園で描ければいいな。
そう思いながら歩いていると、東屋を見つけました。
そこに座ってみると、杉林の原生林が見えます。
特筆すべき場所ではありませんが、ここなら雨が降っても大丈夫でしょう。
僕は東屋の下にイーゼルを立てて描き始めました。
この公園は訪れる人がほとんどいないのか、僕一人きりでした。
天気予報の通り、昼頃から雨が降り始めました。
ここまでは想定内でしたが、徐々に気温も低下してきました。
長袖のジャージを着ても寒いほどで、フリースも持ってくるべきでした。
しかも雲が厚くなってきたことで、徐々に辺りが暗くなってきました。
このまま描き続けたくないなぁ…。
宿に戻ってゆっくりしたいなぁ…。
僕の中で、そういう気持ちが膨らんでいきました。
結局、最後まで仕上げることを諦めてしまいました。
残りの部分は適当に白い絵の具で埋めてごまかし、全体的に霧がかかっているように見せました。
明らかに手抜きであり、僕自身でも、これはひどいな…と思う仕上がりです。
僕はがっかりしながら、山を下りてライダーハウスに戻りました。
すると、そこにはすでに一人の男性が休んでいました。
彼の名前は真鍋さんといって、自転車で北海道を回っているそうです。
年齢を尋ねると、思っていたよりも高齢でした。
「今日は、ラベンダー畑を見るつもりだったんです。でも、天気がこんな具合でしょ。
せっかくだから、晴れた日に見たかったんですけどね」
彼はそう言って、残念がっていました。
「でも、今は雨が降っていないようですよ」と、僕。
「そうですね…じゃあ、行ってみますか。せっかくだし」
彼は出かけて行き、僕は宿で少し眠りました。
それから、恒例のメロンを頂くことにしました。
ここに泊まるのも今日が最後で、明日は美瑛に移動するつもりです。
最後の記念にと、小さなスケッチブックにメロンの絵を描いて、店の人に渡しました。
「ずいぶんお上手ですね」
店員は喜んでくれました。
まあ、これが本職ですから。
夜になると、ときおり雨が激しくなってきました。
僕はその中を歩き、温泉とレストランに行きました。